整形も見破る「顔識別技術」〝マイノリティ・リポート〟が現実に!

カメラで撮影された顔の映像を識別する技術が急速な進歩を遂げている。個人を特定する「顔認証」、不特定多数の性別や年齢を推測する「顔認識」。メリットをもたらす半面、SF映画さながら「知らずに自分の行動が追跡される世界」も一歩手前に迫っている。どういう技術で、どのように使われているのか探った。 YouTube Preview Image 人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(大阪市)の入園ゲートを訪れた来場客。手にチケットはない。設置されたカメラが顔を撮影すると、1秒とたたずにゲートのロックが解除され、列をなす他の客を尻目にゲートを通過した。 このサービスは顔認証技術を利用したもので、年間パスポートを購入した客に提供される。利便性や一般客への優越感もあり、人気を集めているという。 顔認証は、人の顔の特徴をつかみ、データベースと照合して個人を特定する技術だ。空港の監視カメラやスマートフォンのロック解除など、「なりすまし」防止に使われることが多い。 米国の評価機関に顔認証の精度が「世界一」と認定されたNEC(東京)のシステムでは、顔画像を複数の部分に分割し、顔の凸凹具合などを数値化。データベースの中で、各部分の類似値が最も高い人物を同一人物と推測する。正面の撮影など条件がそろえば99%以上の精度といい、ひげやかつら、多少の整形手術はもちろん、一卵性双生児の違いも見破る。 ◆「次世代の自販機」 類似の技術に、個人を特定せず顔の各部位や輪郭、しわなどから、性別と年齢層といった属性を推測する「顔認識」がある。 首都圏に500台導入された「次世代自販機」は搭載カメラで客の属性を推測。「多くの男性会社員が小腹を満たすため、夕方に甘い飲料を購入する」といった傾向をつかみ、属性に応じたお勧めの飲料のランプを点灯させて提案する。集客力は普通の自販機の1・5倍という。 日立ソリューションズ(東京)が開発したシステムは、年齢層と映り込んだ秒数を表示。商業施設の入り口に設置すれば、どういった客がどの時間帯に多く出入りするか、売り場であれば何に興味を示したかが把握でき、商品開発やレイアウト改善に生かせる。 このようにリアルタイムで得られる大量のデータは「ビッグデータ」と呼ばれ、マーケティングなどで利用されている。ある社の担当者は「企業はビッグデータを喉から手が出るほど欲しがっている」と指摘する。 ◆捜査にも応用可能 2002年の米SF映画「マイノリティ・リポート」には、街中に設置された認証装置が通行人の網膜を自動スキャンし、個人を特定した上で次々と広告が映し出され、名前を呼びかけてくる一幕がある。 これは顔認証の“未来版”といえるが、東大生産技術研究所の佐藤洋一教授(46)は「今後5〜10年で技術はかなり進歩する。技術的に映画のような世界はあり得る」と予測する。 交流サイト「フェイスブック」など、ネット上に“データベース”となり得る顔写真を実名つきで登録する人も多い。認証精度がさらに上がった将来、街中の防犯カメラからネット経由で送信された映像データがハッキングで盗み出され、ネット上の顔写真と照合されることになれば、居場所を特定される恐れもあるという。 佐藤教授は「将来、犯罪捜査に本格導入されれば飛躍的に捜査の効率が上がる」と治安上のメリットを指摘する一方、「データの管理、運用を厳格にする必要がある」とクギを刺す。 ■「使用基準作り急務」 顔を識別する技術は目新しく、消費者が不安を感じてしまいがちだ。個人情報問題に詳しい岡村久道弁護士(55)は「使用基準を早く定めるべきだ」と指摘する。 個人情報保護法は個人を識別できる情報を「個人情報」と規定。取得した個人情報の用途を伝える義務がある。 年齢などの属性を推測する顔認識では、企業側は「すぐに画像データは消去され、残るのは属性情報だけなので個人情報には当たらない」と説明する。 しかし、どこまでが個人情報に当たるのか、司法は具体的に示していない。 国は昨年11月、研究会を設置して問題点の洗い出しと指針の検討に着手。 岡村弁護士は「『本当にデータは破棄されているのか』と疑念を持たれないようにするためにも、早急な透明性の確保が必要」と訴える。 [Source : 産経新聞 2013年5月6日] マイノリティ・リポート 特別編 [DVD]マイノリティ・リポート [Blu-ray]マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)