詐欺師支える「道具屋」悪質携帯レンタル業者の実態

悪質な詐欺事件グループの犯行を支えていたのは、「道具屋」と呼ばれる携帯電話レンタル業者だった――今年4月に逮捕された男は、身元確認なしで携帯を貸し出してくれるため、詐欺グループのメンバーが次々と“顧客”になっていた。 悪質な詐欺事件グループの犯行を支えていたのは、「道具屋」と呼ばれる携帯電話レンタル業者だった-。今年4月、身元を確認せずに携帯電話を貸し出したとして、業者の男(29)が警視庁に逮捕された。男が貸し出した携帯電話は振り込め詐欺などに悪用され、4年間で5億円超がだまし取られていた。身元確認なしで貸し出してくれるため、詐欺グループのメンバーが次々と“顧客”に。その中には、東京都心の高級マンションでグラビアアイドルと同棲(どうせい)するほど優雅な生活を送っていた者もいた。

繁華街で待ち合わせ…他人名義に早変わり、携帯用ICチップをレンタル

今年2月に摘発された詐欺グループのアジトから押収された札束。リーダーはグラビアアイドルと同棲していた(警視庁提供) 昨年11月下旬。業者から待ち合わせ場所に指定された都内の繁華街にやってきた詐欺グループのメンバー、安田享司被告(27)は、4万5000円を支払って封筒を受け取った。中には携帯電話端末用のICチップ「SIMカード」が3枚入っていた。

犯行が発覚しないようにするため、他人名義の携帯電話を悪用する詐欺グループは少なくない。SIMカードは携帯電話に差し込むだけで名義が変えられ、それを貸し出す業者も横行している。安田被告が利用した業者は「身分確認なしで携帯電話や周辺機器が借りられる」として、“業界”では特に有名だった。

警視庁捜査2課は今年2月、金融会社を装って融資金名目で静岡県内の30代の女性から計38万円をだまし取ったとして、安田被告ら詐欺グループの男4人を詐欺容疑で逮捕。同課は、このグループが特定の業者から携帯電話などを繰り返し調達していたことを突き止めた。

4月には、安田被告の住所や生年月日を確認せずにSIMカードを貸し出したとして、携帯電話不正利用防止法違反(匿名貸与営業)容疑で、豊島区のレンタル携帯電話会社「NYTカンパニー」社長、梅沢洋介容疑者(29)を逮捕した。

営業不振で方針転換…身元確認せず、「裏社会の住人」を顧客に

捜査関係者によると、梅沢容疑者は平成20年10月に同社を設立。スポーツ紙や夕刊紙に広告を出し、ほぼ個人営業で客を募っていたという。

携帯電話のレンタル業者には氏名や住所、生年月日などの身分確認を行うことが義務づけられている。梅沢容疑者も当初は身分確認を行っていたが、「さっぱり客が集まらず、カネさえ払ってくれればきちんと身分確認をせずに貸し出すようになったようだ」(捜査関係者)。

悪いウワサは口コミで広がり、顧客として詐欺やヤミ金グループなどの「裏社会の住人」ばかりが群がってきた。警視庁の調べでは、21年からの4年間で、梅沢容疑者が貸し出した携帯電話258台が振り込め詐欺などに悪用され、約5億6000万円の被害が出ていた。

詐欺師にとって使い勝手のいい「御用業者」になり下がっていた梅沢容疑者。捜査関係者によると、容疑を認め、「(貸し出した携帯電話が)悪いことに使われているという認識はあったが、もうかるので身分確認をしていなかった」などと供述しているという。

また、警察庁が今年1月以降に犯罪で悪用されたレンタル携帯電話の回線の提供元を調査したところ、ほとんどがNTTドコモだったことが判明。他の大手通信会社が契約する法人の事業規模に応じて回線数を制限しているのに対し、ドコモは上限を設けていなかったことが要因の一つとみられる。

梅沢容疑者もドコモの携帯電話を多く扱っていたという。警視庁はドコモに対し、契約先のレンタル業者の審査を厳格化するよう要請した。

DMで無作為に勧誘…アジトは家賃60万、金庫には4000万

安田被告らの詐欺グループは、梅沢容疑者から借りたSIMカードなどを使い、次のような手順で詐欺行為を繰り返していた。

まずは、架空の金融会社を装い、「100万円まで融資」「ブラック破産の方、あきらめないで」などの誘い文句を並べたダイレクトメール(DM)を無作為に送りつける。

連絡してきた人には「50万円なら融資できるが、実際に融資できるかどうかを確認するので、銀行口座を教えてほしい」と言って、グループ側から5000円程度を相手の口座に入金する。

まず、無条件にカネを振り込むことで相手を信用させ、次に「前金として3万円を振り込んでほしい。確認できれば、すぐに50万円を融資する」と言って、指定した口座に3万円を振り込ませる。

さらに、「50万円を振り込んだが、金融機関の方でトラブルがあったようだ。解決するにはもっと人手がいるが、私たちは少人数で営業しており、解決には人件費がかかる。あと5万円振り込んでくれれば解決できる」などと言って、5万~15万円単位で何度もカネを振り込ませ、だまし取る-という具合だ。

捜査関係者によると、安田被告らは20社以上の社名を使い分け、昨年4月~今年1月に全国の75人から1900万円を詐取したことが確認された。

ただ、グループのリーダーだった中島寛太被告(28)は、千代田区内の家賃約60万円の高級マンションに居住。アジトとしても使っていたこの部屋の家宅捜索では、現金4000万円入りの金庫が見つかっており、被害が確認されている以上に荒稼ぎしていたとみられる。

中島被告はこのマンションで、20代のグラビアアイドルと同居していた。女性は中島被告が詐欺グループのリーダーだったことを知らなかったという。捜査幹部は怒りを込めて、こう訴える。

「だまし取ったカネにモノを言わせ、グラビアアイドルをはべらせるような生活をする詐欺グループを、これ以上のさばらせてはならない。悪用されるのを知りながら携帯電話などを提供する悪質業者も、合わせて厳しく摘発していく」

[Source : 産経新聞 2013年05月14日]