サムスンとアップルに押しつぶされそうなアジアのスマホメーカー

NECの2画面スマホ「MEDIAS W N-05E」
NECの2画面スマホ「MEDIAS W N-05E」
【東京】韓国のサムスン電子と米アップルのスマートフォン(スマホ)市場における存在感はアジア市場全体で強まっており、多くのスマホメーカーは大幅な損失を計上、競争を断念する企業も出てきている。 NECは7月31日、2年前に参入したが赤字だったスマホ事業からの撤退を発表。スマホブームの陰の不均衡があらためて明らかになった。同社の川島勇最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「スマホ対応に後れをとり、魅力ある製品を開発できなかった」と述べた。 スマホ業界における持てる企業と持たざる企業との格差が広がる中で、日本の携帯電話市場は、スマホが出現する以前にその製品の優秀さが高く評価されていたことから、外の流れとは一線を画してきた。携帯電話の高機能化が進んだフィーチャーフォン時代には、日本のメーカーはテレビや各種の支払い機能など、今でこそスマホに標準装備されている驚くべき技術を開発した。 しかし、こうしたデバイスは日本の消費者を対象にしたもので、海外市場での販売は難しかった。 日本の携帯電話業界は、世界の他の地域とは隔絶されて発展してきたことから、しばしば「ガラパゴス」と呼ばれた。チャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島で発見した動物たちと同じように、その地域の環境に順応してきたのだ。 だが独自の技術力に自信を持っていたため、日本のメーカーはスマホへの移行に遅れ、アップルの「iPhone(アイフォーン)」やサムスンの「ギャラクシーS」に比べて新鮮味に欠ける、どれも同じような製品で闘うことを強いられた。このため、かつては自国製品を好んでいた日本の消費者も海外製品に目を向けるようになった。ここ数四半期で世界のトップ5に入っている日本のメーカーは、エクスペリア・シリーズで奮闘しているソニーだけだ。
2013年3月期の日本のスマホ販売シェア
2013年3月期の日本のスマホ販売シェア
アイフォーン4をアイフォーン5にアップグレードすることを考えているある男性(30)は「アップルはそのブランドを打ち立てた。日本のスマホメーカーは遅すぎた。アイフォーン以外スマホを持つ友達は10人のうち1人ぐらいだ」とし、「スマホだったら、アップルかサムスンと考えるのが普通だ」と話した。 NECの発表の1日前、スマホ生産を最も早い時期に始めた企業の一つである台湾の宏達国際電子(HTC)は、2002年のIPO(新規株式公開)以来初めて四半期決算が赤字になる公算が大だとの見通しを示した。かつて日本市場のリーダーだった富士通も30日、過去5四半期で3回目の赤字(4-6月期)を発表した。同四半期の携帯電話販売は前年同期比30%減少した。 四半期の端末出荷台数が52%急増する中でスマホメーカーが陥っている苦境は、現在の業界の2社独占状態を浮き彫りにしている。販売されるスマホのほぼ半分はアップルとサムスンの製品で、しかも利益は両社がほぼ全部を手にしているのだ。 調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、サムスンとアップルの今年第2四半期(4-6月)の携帯電話・スマホ端末からの利益はそれぞれ52億ドル(5090億円)、46億ドルだった。ちなみに世界第3位のスマホメーカー、韓国LGエレクトロニクスのモバイル部門の営業利益は5400万ドル、市場シェアは5.3%にすぎない。 2社独占の形だが、ノキア、ブラックベリー、ソニー、LGなど、強力なメーカーになることを目指す企業の数は多い。聯想集団(レノボ・グループ)や中興通訊(ZTE)、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)など急速に成長する中国のメーカーは、発展途上の中国市場では全て主要ブランドだが、スマホ分野で継続的な利益を上げられるかどうか分からない。 メーカーがひしめく戦場から抜け出そうと苦闘している日本の電子機器メーカーは、総契約数ののほぼ半分を抱える日本最大の携帯通信会社NTTドコモが今夏、そのマーケティング資金を2機種に集中させることを決めたことでも打撃を被った。 アイフォーンを販売していないドコモは、サムスンのギャラクシーS4とソニーのエクスペリアAの2機種を値引きして売り込むことを決めた。この「ツートップ」戦略はドコモの長年のパートナーであるNEC、富士通、シャープ、パナソニックとは距離を置くことを意味する。これらの企業がドコモの潤沢なマーケティング資金をどうしても必要としている時にだ。 ドコモの加藤薫社長はインタビューで、メーカーに対し変わらなければならないと言い続けてきたと述べた。 10年にカシオ日立モバイルコミュニケーションズと統合したNECのモバイル事業の4-6月期の損益は、200億円弱の売り上げで90億円の赤字だった。NECは10年前、国内携帯電話機市場で23%のシェアを持つ最大のメーカーだったが、ライバルとの差別化努力にもかかわらず、スマホ市場参入で苦しんだ。 同社は今年に入って、4.3インチのデュアルディスプレー型スマホと、ピンクのシェルで「オーロラ」のイルミネーションの女性向けスマホを発売した。同社は今後もフィーチャーフォンの生産は続けるとしている。 パナソニックも31日、モバイル事業での赤字が拡大したと発表した。4-6月期の赤字は54億円で、前年同期の37億円から拡大した。売上高は14%の減少だった。同社の河井英明CFOは、モバイル事業は非常に厳しい時期に耐えていると述べるとともに、スマホ戦略を見直す方針を明らかにした。 富士通もスマホ事業で損失を出しているが、この分野から撤退する計画はないとしている。同社の加藤和彦CFOは30日の記者会見で、月間約30万台、年間400万台弱の販売によってスマホ市場で「生き残れる」と語った。同氏は強力な品揃えによって富士通は海外のライバルと競争できると思うとし、「市場は大きく、われわれが逃げ出す必要はない。われわれが勝てるチャンスはある」と自信を示した。 [Source : ウォールストリートジャーナル 2013年 8月 01日 ]